どこにでもいるような普通の一般人が、たまに自分用メモを書いてる。

シンクライアント沼

シンクライアントをシンクライアントとしてではなく使ってみるのが好き。

始まりは HP t5570 だった。999円税別という低価格で興味を抱いた。

※ゼロクライアントは転用できないので基本的に扱わない。

シンクライアントの特徴

  • CPU パワーと消費電力が低い。
  • ファンレスでゼロスピンドルなので静か (一部例外あり)。
  • 企業で使われることが大半で、リースアップ品などが中古に出回る。
  • 同世代でも性能が低い、拡張性が乏しい、または面倒な分、中古価格が安い (ヤフオクでも安価で落札できる)。

CPU

ノート PC や組み込み向けの低消費電力 CPU を採用していることが多い。
消費電力の低さは発熱の少なさにつながるので、ファンレス構成が可能になる。

パワーこそないものの、発売時期に現役世代の CPU なので、命令セットはそれなりに新しいことが多い。

メモリ

発売時期のノート PC 向け SO-DIMM を採用していることが多い。

ストレージ

年式が古いものは Disk on Module (DOM) を採用していることが多い。
DOM の新品価格はかなり高額で、同価格の SSD と比べると容量が0.1%程度になってしまう。中華 DOM でさえ同価格の大手メーカー SSD と比べて1割程度の容量しかない。

近年は mSATA や M.2 等を採用していることが多く、eMMC の例も。

OS

Linux ベースの専用 OS や、Windows 搭載モデルでも組み込み向けの Windows Embedded を採用していることが多い。
再起動で元に戻るように設定されている等の癖がある。

しかもストレージは取り外してあったり、消去済みであることが多い。
こうなると (HP を除いて) 元の OS をリカバリできないし、新規にインストールしてもライセンス認証がない状態になる。
普通のメーカー PC のような BIOS でのライセンス認証がないので、Windows を使う場合は別途ライセンスの調達が必要になる。

HP 機では HP ThinUpdate を使えば出荷時搭載 OS イメージをダウンロード、USB メモリに書き込んでリカバリできる。この場合、ライセンス認証も通っている。

入手性

転用に手間がかかることもあって、中古品は比較的安価に入手できる。
ただし、企業のリースアップ品が大半という特性上、パーツの欠品は多く見られる。
データ漏洩を気にしてかストレージを抜いてあるものもあるし、VESA マウントで使っていたのかスタンドは欠品している場合が多い。
筐体形状がスタンド前提になっている場合を除けば、スタンド欠品はさほど問題にならないのだが。

ノート型の場合

ベースの機種は普通のノート PC で、その筐体やマザーボード配置を流用、低性能 CPU を組み合わせていることが多い。
これに該当するものは、たいていメモリやストレージを交換できる (分解難易度は機種によって異なる)。

触ってみたもの

メーカー 機種 CPU 備考
アプティ (APTi) SecureTerminal T311E AMD Geode LX 800
Atrust mt168W Intel Celeron N2807 ノート
Atrust mt178L Intel Celeron N2807 ノート
Atrust mt178W10 Intel Celeron N2807 ノート
Atrust mt180L Intel Celeron N2807 ノート
Atrust mt180W10P Intel Celeron N2807 ノート
Atrust mt182SW Intel Atom x5-E8000 ノート
Atrust mt188L Intel Celeron N2807 ノート
Atrust t180 Intel Celeron N2930
Atrust t68 Intel Celeron N2807
富士通 (Fujitsu) FUTRO MA574 Intel Celeron 2950M ノート
富士通 (Fujitsu) FUTRO MA576 Intel Celeron 3855U ノート
富士通 (Fujitsu) FUTRO ME734 Intel Celeron 2950M ノート
富士通 (Fujitsu) FUTRO MP702 Intel Celeron 877 ノート
富士通 (Fujitsu) FUTRO MS936 Intel Celeron 3955U ノート
富士通 (Fujitsu) FUTRO MU937 Intel Celeron 3865U ノート
富士通 (Fujitsu) FUTRO S900 AMD G-T44R
富士通 (Fujitsu) FUTRO S720 AMD GX-217GA
富士通 (Fujitsu) FUTRO S720/N AMD GX-222GC
富士通 (Fujitsu) FUTRO S740 Intel Celeron J4105
日立製作所 (Hitachi) FLORA Se210 (RK3) AMD E2-1800 ノート
日立製作所 (Hitachi) FLORA Se210 (RK5) AMD E1 Micro-6200T ノート
日立製作所 (Hitachi) FLORA Se330 (BU1) VIA C7
日立製作所 (Hitachi) FLORA Se330 (BU2) VIA Nano U3500
日立製作所 (Hitachi) FLORA Se330 (BU3) AMD E1-2100 ファン搭載
HP mt20 Intel Celeron 3865U ノート
HP mt31 Intel Celeron 3867U ノート
HP mt40 Intel Celeron B840 ノート
HP mt41 AMD PRO A4-4300M ノート
HP mt42 AMD PRO A8-8600B ノート
HP mt43 AMD PRO A8-9600B ノート
HP mt44 AMD Ryzen 3 PRO 2300U ノート
HP mt45 AMD Ryzen 3 PRO 3300U ノート
HP mt245 AMD A6-6310 ノート
HP t420 AMD GX-209JA
HP t430 Intel Celeron N4000
HP t510 VIA Eden X2 U4200
HP t520 AMD GX-212JC
HP t530 AMD GX-215JJ
HP t610 AMD G-T56N
HP t620 AMD GX-415GA
HP t620 PLUS AMD GX-420CA ファン搭載
HP t820 Intel Core i7-4770S ファン搭載
HP t5135 VIA Eden 400
HP t5325 Marvell Kirkwood 非 x86
HP t5570 VIA Nano U3500
HP t5720 AMD Geode NX 1500
HP t5730 AMD Sempron 2100+
HP t5740e Intel Atom N280
HP t5740wi Intel Atom N280
ミントウェーブ (MintWave) MiNT-ACC plus NS Geode GX1
NEC US300c → Wyse Cx0 VIA Eden (C7)
NEC US300e → Atrust t180 Intel Celeron N2930
ネクスターム (Nexterm) RT-500 AMD Geode LX 800
ネクスターム (Nexterm) SV-II VIA Eden ESP5000 (C3)
VXL Itona Md76 VIA Eden X2 U4200
Wyse C10LE VIA Eden (C7)
Wyse 3030 (N03D) Intel Celeron N2807
Wyse 3040 (N10D) Intel Atom x5-Z8350
Wyse 5010 (D90D7) AMD G-T48E
Wyse 5060 (N07D) AMD GX-424CC
Wyse 5070 (N11D) Intel Pentium Silver J5005
Wyse 5070 (N11D) Intel Celeron J4105

用途

本来シンクライアントは自身で色々処理することには向かないが、省電力で無音という特徴は常時動かすものに向いている。
実際、私はシンクライアントを自宅サーバーとして運用している。

HP t820 は一応シンクライアントということになっているが、HP の小型デスクトップ PC である EliteDesk 800 G1 US をベースに、光学ドライブ非搭載にしたもののように思われる。ファンも前後に1個ずつ。現在私のメイン PC となっている。

ストレージデバイスの調達

IDE SSD

  • 2.5インチ HDD/SSD が搭載可能であれば、玄人志向 KRHK-MSATA/I9 と mSATA SSD を組み合わせるのが最も現実的と思われる。 厚さ 9.5mm が入らない場合は、あわせて KRHK-MSATA/S7 を買って金属スペーサーを入れ替えると厚さ 7mm になる (この二つは金属スペーサーの固定ネジ位置が完全に一致しているので入替可能)。
  • 中華 mSATA → 2.5インチ IDE 変換ケースを使う。ただしケースがプラスチックのものばかりだ。
  • 中華 mSATA → 2.5インチ IDE 変換基板を使う。たとえば Amazon のこれなど。
    この基板は mSATA 端子と反対側にある3端子レギュレーター (5V → 3.3V) が結構分厚いので、mSATA SSD 側でそこに当たる部分にチップがあると干渉する。具体的には mSATA SSD を縦に置き、切り欠きが左上にある状態で、ネジ穴側にチップがないものが良い (mSATA SSD の固定が多少甘くても良ければ、該当部分にチップがある SSD でも絶縁だけ確認すれば良いかもしれない)。
    3端子レギュレーターがないものもあるが、IDE 44ピンの電源 (通常 5V) に 3.3V を給電する特殊な機種向けのもので、そうでない機種では動作を期待できない。

IDE Disk on Module (DOM)

  • AliExpress で中華 DOM を買う。信頼性に乏しい中華 DOM である上、SSD として考えるとかなり割高。さらに年々出品が減っている。
  • たまに単品でヤフオクに出ていることがあり、運が良ければ入手できる。
  • CF-IDE 44ピン変換基板の IDE 44ピン端子がメスになっているものを調達して CF を使う。
  • ヤフオクで Wyse Cx0 の OEM、NEC US300c の中古を買って中身を取り出す。Cx0 の DOM は 128MB だが、US300c には 2GB がついている。

CF 変換基板で注意すべき点として、端子の向きが逆になっている場合がある。
horizontal DOM は IDE 44ピンの爪がない側に基板が伸びている。筐体内はこの DOM が収まるように設計されているので、DOM と同じ向きの変換基板なら入ることが多い。

mSATA mini SSD

  • AliExpress で中華 SSD を買う。信頼性に乏しい中華 SSD である上、SSD として考えるとかなり割高。
  • たまに単品でヤフオクに出ていることがあるので運が良ければ入手できる。ある程度大容量のものだと、私が競り合う可能性がある :-)
  • SSD 装着部分のスペースに余裕がある場合、mini PCI Express ハーフサイズカードをフルサイズに延長するアダプターを裏返しに装着して、そこに mSATA SSD をネジ止め可能かも知れない (例: Atrust mt180)。

今時の SSD として普通の容量、控えめに言ってたとえば 60GB 以上が欲しいとなると、普通の SSD に多少なりとも近い価格で入手できるのは中華に限られる。
2023年6月現在、Mouser で Apacer の mSATA mini SSD を取り扱っているが、TLC SSD 60GB に1万円近く出す気になるだろうか?

SATA ハーフスリム SSD

ヤフオクで比較的入手しやすい。
SanDisk など、2.5インチ SSD でも中身はハーフスリムの場合があるようだ。

CompactFlash、SD、microSD

一般論として SSD より耐久性が劣る場合が多いので、産業用や (容量が小さくてもよければ) SLC を選ぶ必要がある。

どうしようもない場合: USB

どうにも調達できない場合や、Atrust の mt68Lmt178L のように eMMC しかなくて M.2 も mSATA も端子がない場合は、USB メモリや USB SSD に頼るほかない。
この場合の入手性は非常に高い。

私はM.2 2242 SATA → USB 3.0 変換ケースInnodisk M.2 (S42) 3ME4 という M.2 2242 SATA SSD の 32GB を組み合わせることが多い。
この SSD は2023年6月現在ヤフオクでかなり安価に入手できる状況が続いている。
耐久性が読みにくい USB メモリよりも SSD の方が安心できるし、2242 に限定することで変換ケースもかなりコンパクトなものを選べるため、USB メモリとさほど変わらないサイズになると思われる。

OS をどうするか?

私は基本的に Debian GNU/Linux を使っている。
ただし (普通の) Windows を入れている場合もあるし、686 未満の CPU では Debian stretch 以降が動作しないために他の OS を使う場合もある。
FreeBSD も 13.0-RELEASE から 686 以降が前提になり (配布バイナリが 686 以降向けでコンパイルされる)、極端に古い機種では選択肢が狭まっている。

HP シンクライアントの場合

HP 機は ThinUpdate で出荷時搭載の OS リカバリイメージをダウンロードできるので、サポート中の OS バージョンを搭載していたモデルはそのまま使える。

ただし、あくまでシンクライアント用の OS なので、以下のような特徴がある。
(Windows 10 系の場合)

  • 自動ログインのアカウントは色々制限されている。
    1. 管理者アカウントで入り直す。パスワードはアカウント名と同じ。
    2. コントロールパネルの HP Logon Manager で自動ログインの設定を変更できる。
  • United Write Filter (UWF) 等の書き込みフィルターが有効になっているため、ローカルストレージへの保存がシャットダウンや再起動で消える。
    1. 管理者アカウントでログインしてタスクトレイの南京錠アイコンから無効化できる。
  • Windows Update が無効化されている。
    1. レジストリエディターで HKLM\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\WindowsUpdate\AU を削除して再起動。
    2. Windows 管理ツール→サービスで Windows Update を有効にして適用、開始。

なお、ThinUpdate でリカバリイメージをダウンロードする際には、必ずバージョンまで含めて出荷時搭載 OS を選ぶ必要がある。
たとえば mt44 の Windows 10 IoT Enterprise リカバリイメージは LTSB と LTSC があり、LTSB 搭載機に LTSC リカバリイメージは入らない。

586 以前の CPU で使える 現行 OS

Linux

  • Debian: jessie までは 586 以降で動作するが、LTS は2020年6月、ELTS も2025年6月で終了 (ELTS はサポート対象パッケージがかなり限定的)。
  • Gentoo: 486 以降で動作し、2018年には 486 で Gentoo が起動する動画が話題になった。だがバイナリパッケージシステムがなく全部手元でコンパイルする仕組みなので、遅い CPU では最も選びたくないディストリビューションだ。
  • Slackware: 586 以降で動作する (huge.s)。

なお Gentoo、Slackware ともにストレージ容量が十分に確保できない環境では利用できない。
IDE DOM 2GB しかないような環境では無理。

BSD 系

  • FreeBSD: 12.x までは 486 以降で動作するが、13.0 以降は配布バイナリが 686 以降向けになったほか、32bit x86 サポート自体が Tier 1 から Tier 2 に格下げとなってしまった。13.0 以降も 486、586 用のインストールイメージを自分でビルドすれば利用可能ではあるが、バイナリパッケージも 686 以降向けにビルドされるようになったため、ports でビルドすることが前提になり、Gentoo 同様に厳しい。
  • NetBSD: 486 以降で動作する。
  • OpenBSD: 486 以降で動作する。

番外編

シンクライアントではないが、小型・低性能・低消費電力・ファンレス等、シンクライアントに似た特徴を持つ PC たち。

メーカー 機種 CPU 備考
AOpen DE3250 Intel Celeron N2930
CompuLab fit-PC2 Intel Atom Z530
ハイテックシステム (HightechSystem) HTC-324 AMD Geode LX 800
HPE EL10 Intelligent Gateway Intel Atom E3826
iCop EBOX-3310A-JSK DM&P Vortex86DX
iCop EBOX-3310MX-AP DM&P Vortex86MX+
iCop EBOX-3310MX-M DM&P Vortex86MX+
Skynew M2S AMD A6-1450
VIA AMOS-3001 VIA Nano U3300
VIA ARTiGO A1000 VIA C7 ファン搭載
Zotac ZBOX CA320 nano AMD A6-1450
Zotac ZBOX nano VD01 VIA Nano X2 U4025 ファン搭載
Zotac ZBOX nano XS AD11 AMD E-450 ファン搭載

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